導入
韓国の主要サイクリングロードを全制覇する「グランドスラム」を目指す自転車旅。前回は過酷な無補給地帯を乗り越え、なんとか自然に囲まれた静かな土手沿いでのキャンプ野宿に成功しました。

今回は、そんな野宿の朝からスタートし、韓国第3の都市と呼ばれる大都市・大邱(テグ)を目指す約100キロメートルのロングライドをお届けします。道中に待ち受けていた無人コンビニの罠、パニアバッグを襲う謎の黄色い粉、そして大邱の夜に迷い込んだことで奇跡的に出会えた激ウマご当地グルメまで、実際にペダルを漕いで体当たりで集めたリアルな情報と、旅に役立つ実践ガイドを分かりやすくまとめました。
1. 旅のリアル体験記
激しい風が吹き荒れていた前夜の野宿から一転、朝を迎えると外は嬉しいほどの無風に。テントの片付けがスムーズに進み、気持ちの良いスタートを切ることができました。昨日、まともに食器を洗えなかったことが少し心残りですが、まずは自転車を走らせながら近くにコンビニが見つかることを祈ります。自分が使わせてもらった場所は、来た時よりも綺麗にして去るのが旅人の最低限のマナー。「次にここで野宿する人はいないかもしれないけれど、マナーが厳しくなって誰も泊まれなくなったら困るからね」と、周辺をしっかり整えてから出発します。
本日の目的地は、約100キロメートル先にある大都市・大邱。途中、3つほどの無人認証センターでスタンプを押しながら向かう計画です。
走り始めて最初のスタンプポイントである「亀尾洑(クミボ)認証センター」には、およそ10キロメートルほどで到着。ここはすぐ近くにトイレもあり、とても綺麗なスペースが広がっていました。「ここでキャンプすれば良かったな!」と思わず悔しがるほど環境が良く、野宿スポットを探す難しさと事前の情報収集の大切さを痛感します。

スタンプを押して次へ向かおうとすると、案内板には次の認証センターまで「35キロメートル」という遠い距離が示されていました。見渡す限りサイクリングロードの周りには何もなく、やはりこの辺りもコンビニが全く見つかりません。途中で、以前見かけたことのある懐かしの無人コンビニを発見し、「やった!カップラーメンを食べよう」と色めき立ったのですが、近づいてみると鍵が閉まっていて入れませんでした。時間帯のせいなのか、あるいは閉店してしまったのか、自販機も生きておらず、お腹を空かせた身には悲しいハプニングとなりました。
「この先にお店はあるのだろうか」と不安になりながらネイバーマップで調べると、ルートから少し外れて橋を渡った「亀尾(クミ)」の街中に入れば、お店がたくさんあることが判明。補給のために寄り道をすることに決定しました。
韓国のコンビニ(GS25)に駆け込み、まずは大好きなコーラを手に取ります。韓国のコーラは一見高く感じられますが、実は多くのコンビニで「1+1(ワンプラスワン:1個買うともう1個無料)」という神ルールが適用されています。実質1個あたり約150円ほどになり、日本よりも安く買えるのが炭酸好きの自転車乗りにはたまりません。

さらに、韓国のコンビニ弁当事情にも驚かされました。日本のように綺麗に仕切られたお弁当は少なく、ご飯の上にスパムやテリヤキマヨネーズなどの具材を乗せ、レンジで温めてから全部を豪快に混ぜ合わせて食べるビビンバ風のスタイルが多く見られました。これが約500円という安さながら、辛いものを回避でき美味しくいただけました。ポテトが巻き付いた不思議なホットドッグやアイスまで一気に爆食し、気がつけばコンビニで2,000円近くも使ってしまう結果に。しかし、前夜にまともな夕食を食べていなかったことを考えれば、最高のエネルギーチャージです。
お腹がいっぱいでペダルを漕ぐのが少し苦しくなりながらも、ルートに戻って本日2個目の「漆谷洑(チルゴクボ)認証センター」に到着。ここには自動でインスタントラーメンを作れる機械が置かれたコンビニが併設されており、サイクリストにとって絶好の休憩場所になっていました。

ここから次の場所までは約30キロメートル。再び自転車を走らせていると、この時期特有のトラブルに見舞われました。道路やテント、さらには自転車のチェーンにまで、謎の「黄色い花粉」が大量に付着して真っ黄色になってしまうのです。途中でチェーンが外れるハプニングがあり、手で直そうとチェーンに触れたのですが、なんと花粉が油をコーティングしてしまっており、手が全然汚れないという信じられない現象が起きました。
アップダウンの激しい都会の坂道に体力を削られながらも、ようやく本日3個目の認証センターで最後のスタンプを押し、大邱の街中へ。

大邱は想像を遥かに超える巨大な近代都市で、街に入ってからホテルに辿り着くまで、実に1時間以上もかかりました。今夜の宿は、木製の壁でしっかりとプライベートが区切られた格安のドミトリー。カーテンのない宿だと落ち着きませんが、ここは非常に清潔で快適に過ごせそうです。
夜は自転車を置き、経験のために大邱の地下鉄に乗って街へ繰り出しました。事前に調べていた「豚骨スープベースのクッパ」の名店を目指してGoogleナビを頼りに歩き、目に入ったお店に勢いよく飛び込みました。

しかし、3人前からしか注文できないようで、せっかくなのでお勧めの通りに3人前を頼み、目の前のロースターに火が灯るのを眺めていたのですが、運ばれてきた料理を見て驚愕しました。スープではなく、目の前に現れたのは大量の「豚ホルモン」だったのです。


なんと、完全に店を間違えて入ってしまっていました。しかし、これが怪我の功名。実はこれこそが、大邱を代表する超有名グルメの「マッチャン(豚の直腸焼き)」だったのです。お店の人が丁寧にハサミでチョキチョキと切ってくれたホルモンをカリカリに焼いて食べると、コリコリとした食感と凝縮された旨味が口いっぱいに広がり、言葉を失うほどの美味しさでした。サラダのタレも絶品で、電車に乗ってわざわざ食べに来た甲斐がありました。店を間違えたハプニングすらも、最高の思い出と最高の味に変わる。これだから自転車旅はやめられません。
まっちゃんのお店

正解のクッパのお店 (道挟んで隣でした)

2. 【徹底ガイド】洛東江自転車道〜大邱の歩き方
- 見どころ: 亀尾から大邱にかけての洛東江自転車道は、巨大なダムや美しい水辺の景色が続くダイナミックなルートです。「亀尾洑」や「漆谷洑」といった認証センター周辺は、美しく整備された水辺の公園になっており、ベンチやトイレも充実しています。また、大邱の街に入れば、近代的な高層ビル群と、地下鉄で行くことができる活気あふれるグルメ街「マッチャン通り」など、地方の自然と大都会の両方の魅力を1日で味わうことができます。
- アクセス: 基本的にはサイクリングロードのブルーラインを辿るだけで大邱の手前までアクセスできますが、大邱の市街地やホテルへ向かう際はロードを外れて一般道を走る必要があります。大邱の街中は車の交通量が非常に多く、激しいアップダウンや立体交差があるため、スマホのナビアプリが必須となります。
- 所要時間: 野宿地(亀尾周辺)から大邱の市街地までは約100キロメートル。途中のコンビニ補給や街中での走行ロス、認証センターでの休憩を含めると、約6時間〜7時間を見込んでおくと余裕を持った計画が立てられます。
- 注意点:
- 無人コンビニの営業状況に注意: サイクリングロード沿いにある無人コンビニや店舗は、時間帯によって閉まっていたり、営業していないケースが多々あります。「お店があるから大丈夫」と過信せず、前もって街中の大きなコンビニ(GS25など)を見つけた際にしっかり買い出しを済ませてください。
- 恐怖の「黄色い花粉」対策: 春先のシーズンは、道路や木々から大量の黄色い花粉が飛散します。テントやパニアバッグ、そして自転車のドライブトレイン(チェーンやギア)が真っ黄色になるほど付着し、チェーンの潤滑不良を招くことがあるため、旅の途中でもこまめな洗車やチェーンオイルの注油ができる準備があると安心です。
- 韓国コンビニの「1+1」を狙え: 費用を抑えたい自転車旅において、コンビニの「1+1」や「2+1」の札がついた商品は強い味方です。同じ商品をレジに持っていくだけで1個無料になるため、見落とさずに活用しましょう。
- 大邱の名物グルメは注文単位に注意: 大邱名物のホルモン焼き(マッチャン)などのお店では、1人旅であっても「最初の注文は3人前から」というローカルルールが存在することが多いです。量は意外とあるので、予算や空腹具合を考慮して入店してください。また、辛いものが苦手な方にとって、コンビニの混ぜ込み弁当(スパムマヨ等)やマッチャンは辛さを回避できる最高の選択肢になります。
- 大邱の移動は交通系ICカード(Tマネー / WOWPASS)で: 大邱の地下鉄は、ソウル等で使われている「Tマネーカード」や、外国人旅行者向けの「WOWPASS」でそのままタッチ決済して乗車できます。ただし、WOWPASSは地方都市だと外貨チャージができる機械の設置場所が限られているため、大邱のような大都市に到着したタイミングで、あらかじめ残高を多めにチャージしておくことをお勧めします。

まとめ
無人コンビニにフラれ、大量の黄色い花粉にまみれ、最後はお店を間違えるというハプニング連続の1日でした。しかし、その間違えた先で出会った大邱名物「マッチャン」の味は、自転車で100キロメートルを走り抜いた体にこれ以上ないご褒美となりました。
大都市の快適なドミトリーでしっかり体力を回復させ、次なる目的地へと備えます。ハプニングを笑顔で乗り越える楽しさこそ、韓国自転車旅の本当の魅力です。大都会のグルメと、どこまでも続くサイクリングロードの爽快感を味わいたい方に、この洛東江〜大邱ルートは心からお勧めできます。

