【韓国自転車旅7】安東(アンドン)から釜山へ向かう洛東江(ナクトンガン)自転車道へ!23.5%の超激坂トラップとコンビニのない無補給地帯を生き抜くキャンプ&野宿リアルガイド

TRIP

導入

韓国全土を網羅する広大なサイクリングロードを走破する自転車旅。前回は安東ダムに到着し、20年以上も世界を旅する大ベテラン夫婦の「グランドスラム(韓国主要自転車道全制覇)」達成という、胸が熱くなる奇跡の瞬間に立ち会いました。

今回は、前夜に滞在した安東の街を出発し、いよいよ韓国最長を誇る「洛東江(ナクトンガン)自転車道」へと本格的に突入します。しかし、待ち受けていたのは最大斜度23.5%という壁のような激坂トラップや、走っても走ってもお店が見つからない過酷な無補給地帯。この記事では、私が実際に体験したリアルなトラブルや驚きの発見とともに、自転車乗りが知っておくべき補給事情やキャンプ・野宿スポットの探し方を徹底的に解説します。

1. 旅のリアル体験記

朝7時23分、前夜にお世話になった安東のホテルを出発しました。このホテル、1泊約2,500円という信じられない安さだったのですが、なんとシリアルと食パンの軽食ながらも朝食が付いていました。物価高の現代において、この価格で朝のエネルギー補給ができるのは本当にありがたい限りです。

本日のルートは、昨日走ってきた道を約72キロメートルほどそのまま引き返す形で、セジェ自転車道との分岐点を目指します。動画的には同じ景色の「ワープ」になりますが、実際のペダリングはずっと強い向かい風との戦いでした。遮るもののない一本道を向かい風に抗いながら進むのは、想像以上に体力を削られます。

必死にペダルを漕ぎ続け、ようやく懐かしの分岐点へと戻ってきました。「やっと戻ってこれた……」と思わず本音が漏れるほどクタクタでしたが、分岐点にある無人認証センターには最高の救いがありました。なんと、設置されている冷蔵庫の中に冷たい水が用意されていたのです。「せっかくだから飲ませてもらおう」と一口含むと、驚いたことに中身がシャリシャリに凍っています。火照った体に冷たい氷水が染み渡り、生き返るような心地がしました。

ここで、これまでに走ってきた「セジェ自転車道」に別れを告げ、ここからは釜山へと続く「洛東江(ナクトンガン)自転車道」へと足を踏み入れます。この洛東江ルートは全長約385キロメートルにおよぶ、今回の旅で最も長い最終決戦の道です。すでに65キロほど走ってきたので残りは約320キロ。「本当に遠いな」と身が引き締まります。途中にある韓国第3の都市・大邱(テグ)は大きな街なので、そこに着いたら2泊くらいしてゆっくり街を巡ろうか、などとこれからの計画に胸を膨らませます。

しかし、新たな道に入った途端、洛東江の洗礼を受けることになりました。ルートは延々と土手の上に作られており、見渡す限りさえぎるものが一切ありません。そこへ強烈な風が吹き荒れ、風をかわす場所がないため体力を激しく消耗します。12時の時点で走行距離は66キロ。今日も100キロ超えのロングライドになりそうな予感が漂います。

追い打ちをかけるように、ルート上に突如として信じられない看板が現れました。「傾斜23.5%」の文字。目の前に現れたのは、もはや坂ではなく壁です。自転車に乗って登るなど不可能なレベルで、諦めて押し歩きを始めましたが、あまりの激坂に足が滑ります。ブレーキを限界まで強く握りしめていないと、自転車の重みでそのまま後ろへバックして引きずり落とされそうになるほど命がけの押し歩きでした。膝への負担を考えると、こうした7%を超えるような坂は無理をせず、早めに歩いて体力を温存するのがロングライドの鉄則だと改めて痛感します。

激坂を越えた後、綺麗な公園の中にあるカフェに立ち寄り、冷たいカフェラテで一息つきました。韓国のカフェでは注文時に「ノンスイート(甘さなし)」か「スイート(甘さあり)」かを丁寧に聞いてくれるのが嬉しいポイントです。私は普段ノンスイート派ですが、これだけ過酷な自転車旅をしていると、体にエネルギーを補給するためにスイートを選んでも良かったかもしれません。公園内にはオレンジ(あるいはミカン)のような可愛いゆるキャラのオブジェがあり癒やされました。安東はリンゴが有名でしたが、この地域はまた別の特産品があるようです。

道中、サイクリングロード沿いに綺麗なオートキャンプ場を見つけました。案内板を見ると利用料金は2万ウォン(約2,000円〜3,000円)と書いてあります。韓国の多くのオートキャンプ場はグランピング風で高額なところが多く、「これなら少し足して安いホテルに泊まった方がいいな」と思うことが多いのですが、この価格でシャワーや水回りなどの設備が使えるなら大アリです。ハングルが読めず苦戦することもありますが、こうして料金表が明記されていると外国人旅行者でも安心して利用できます。

その後、1箇所の認証センターに立ち寄り、無事に本日1つ目のスタンプを獲得。そこで立てかけていた自転車をガシャーンと倒してしまうハプニングもありましたが、気を取り直して次のスタンプ(約17.4キロ先)へ向かいます。すると、嬉しいことに風向きが変わり、待望の「追い風」になりました。風切り音がピタッと止み、背中を押されるようにスイスイと進む感覚はまさに最高の一言です。

しかし、ここで重大な問題が発生します。時刻は14時半を過ぎましたが、走っても走ってもサイクリングロード沿いにコンビニが全く現れないのです。「この辺りはコンビニがない」という事前情報を小耳に挟んではいましたが、本当に見事に何もありません。途中にカモ肉(オリコギ)を扱うローカルな食堂を見つけたものの、1人旅で食べるには結構いいお値段だったため断念。朝にホテルの無料パンを食べておいて本当に救われました。今日は昼食抜きを覚悟し、「ダイエットになるからいいか。夜にインスタントラーメンを作ろう」と割り切ることにします。

次の認証センター(洛丹堡認証センター)の手前には、何やら受付のような建物があり、係の人が座っていました。「ここは一体何をやるところだろう?」と気になり、思い切って尋ねてみることに。言葉は完璧に通じなくても、身振り手振りでコミュニケーションを取った結果、ここは全ルートを走り終えた後に完了ステッカー(認証シール)をもらう場所だと分かりました。「最後にまとめて全部もらっても大丈夫ですか?」と聞くと、笑顔で「OK」と言ってもらえ、現地の人の優しさに触れてホッと安心しました。

気がつけば周囲は夕暮れ時。ずーっと土手沿いの道が続いており、ベンチや東屋といった野宿に適した場所が全く見つからず、最初の旅で野宿場所が見つからずにドツボにハマった苦い記憶が頭をよぎります。「やばい、寝る場所がない……」と焦り始めたその時、サイクリングロードのすぐ脇に、風が避けられそうで「キャンプ禁止(No Camping)」の看板もない絶好の平地を発見しました。「よし、今日はここでキャンプしよう!」

急いでテントを設営し、なんとか暗くなる前に今夜の拠点が完成しました。テントの中に入り、ランタンの灯りの下でホッと一息つきながら、静かに明日の大邱(テグ)へ向けたルートプランを練り始めます。コンビニなし、超激坂ありの過酷な1日でしたが、静かな夜のテントの中で過ごすこの時間こそが、旅の最高のスパイスです。

2. 【徹底ガイド】安東〜洛東江(ナクトンガン)自転車道の歩き方

  • 見どころ: 洛東江自転車道は、韓国で最も長いサイクリングロードであり、雄大な川の流れを真横に眺めながら走る土手沿いの直線美が魅力です。道中には美しく整備された水辺の公園や、サイクリストを歓迎するユニークな地域ごとのゆるキャラオブジェ、そして旅の達成感を証明する赤い「認証センター(スタンプ台)」が点在しており、スタンプラリー感覚で飽きずに走り続けることができます。
  • アクセス: 起点の安東市街地からは、基本的に路面に引かれた「ブルーライン」を追いかけるだけで迷うことなく洛東江自転車道に入ることができます。全線にわたって車道と完全に分離された自転車専用道路が整備されているため、安全にロングライドを楽しむことが可能です。
  • 所要時間: 今回のルート(安東周辺から引き返し、洛東江の初期の認証センターまで)は約100キロメートル弱のステージとなります。向かい風や激坂による押し歩きが発生するため、平均時速15km前後で見積もっても、休憩を含めて約7時間〜8時間のまとまった移動時間が必要です。
  • 注意点:
    • 23.5%の超激坂トラップ: ルート上には突如として斜度20%を超える壁のような激坂が出現します。重いパニアバッグを積載した自転車を無理に漕いで登ろうとすると、膝を痛める原因になります。また、押し歩き時もブレーキをしっかり握らないと自転車ごと後ろに滑り落ちる危険があるため、一歩一歩踏み締めて登ってください。
    • 恐怖の「無補給地帯」: 安東ダム認証センターから洛丹堡認証センターにかけてのサイクリングロード沿いには、コンビニが一切ありません。地方の食堂は数軒あるものの、お一人様向けのメニューが少なかったり高額だったりします。出発前に必ず街のスーパーやコンビニで、最低でも1日分の水(または浄水ボトル)と、行動食(パンやシリアル、ラーメンなど)を完全に補給してから出発してください。
    • 野宿・キャンプスポットの選定: 土手沿いの道は何キロにもわたって遮蔽物がなく、テントを張る東屋(あずまや)やベンチが見つかりにくい区間があります。暗くなってからの場所探しは非常に危険なため、15時を過ぎたらルート脇の平地や「キャンプ禁止」と書かれていない安全なスペースを早めに探し始めることを強く推奨します。
    • 行政機関のトイレ活用: 韓国のサイクリングロード周辺にある地域の行政機関や公共施設は、旅行者に対してトイレを自由に開放してくれている場所が多く、非常に衛生的で困ることはありません。ゴミの分別回収スポットも比較的多く設置されているため、マナーを守って利用しましょう。

まとめ

安東から始まった洛東江自転車道の旅は、23.5%の激坂や予期せぬ無補給地帯といった自然と環境の厳しさを突きつけられる一日となりました。

しかし、向かい風を耐え抜いた先にある追い風の爽快感や、無事に見つけたキャンプ地で過ごす静かな時間は、何物にも代えがたい海外ロングライドの醍醐味です。事前の補給さえ怠らなければ、これほど綺麗に整備されたサイクリングロードは世界中を探しても他にありません。自転車1台とテントを抱えて、あなたもこの壮大な韓国最長のルートに挑戦してみませんか?

タイトルとURLをコピーしました